みんなの将棋

「頭脳勝負」(渡辺明ちくま新書)という本を読んだ。ご存知競馬が趣味の一流棋士渡辺明竜王の本です。将棋界のことはなんとなくしか知らなかったけど、まさにそういう人のための本でした。巻末に将棋の遊び方まで解説してくれてます。JRAはちょうど新規ファンの開拓をっていう流れになってるんだから、渡辺竜王の動きはひとつのお手本として参考にしたらいいと思った。
将棋のプロは車の走る道路を目をつぶって横断してもひかれないぐらい超人なのはあまりにも有名だけど、渡辺竜王は競馬やったり桃鉄やったり普通の人っぽくて親しみやすい。見た目に威圧感まったくないしなあ笑。この本を読んでてもバランス感覚の人だなあと。競馬でもロマン派っていうのと亀谷っていう極端なスタイルがある。競馬を完全に割り切ってシステム化しようとする亀谷はほんとえげつないぜ。将棋に限らないけどアスリートやアーティストが金の話ってやらしいイメージがある。勝負や芸術の世界の人はそういうものに興味が無いものだという勝手な願望ね。この本では将棋の世界の説明としてお金の話も出てくる。お金の話が興味をひけるっていう計算というかその嗅覚が普通人だし、またそれが渡辺竜王の場合違和感が無い笑。将棋コンピュータのボナンザを返り討ちにした話なんかもいかにも現代っ子。でも一方では将棋の道を極めたい的な勝負師っぽさもある。
個人的にはトップ棋士たちの紹介が面白かった。簡単に言えば全員将棋が強いでおしまいなんだけど、ちゃんといろいろ個性があるんだなあと思った。テニスとかと一緒で説明されないとそういうのってなかなかわかりにくい。競馬でも岩手問題のときに書いたけど騎手とか馬の個性は積極的にアピールしていった方がいい。その点で、蛯名の顔を公然といじりたがる後藤は偉いよね。土曜の深夜やってたみんなのウマ倶楽部でスポーツ紙から6人の記者出てたけど、それぞれの紹介における番組の必死な工夫ね。あれぐらい貪欲にやっていくべきだ。
もうひとつ気になったのは、流行の戦法の話。ゴキゲン中飛車っていうのが現在の流行戦法らしいのだけど、ちょっと前に競馬の予想もいろいろな考え方が次々と生まれて進化していってるということを書いたばかり。そうは言っても競馬は賭けたお金の奪い合いなので、全員が同じ戦法を採用して進化していくと結局成績は変わらない。近代における競馬予想も一定の定跡を身に付けたその先の個性が本当の勝負という感じになってきた。そうやって競馬の予想や個性と向き合えば、実馬券とは別に誰かのそれと戦わせてみたくなるのが男の子ってものだと思うのね。まあこれ以上は言わないよ。