非定型うつ病

機は熟した(冗談。今日は長年研究している心の病についての話です。まあ要するに感想文なんですけど。読んだのは『気まぐれ「うつ」病』(貝谷久宣/ちくま新書)。症例をだらだら並べているので全体的な印象ではあまり鋭さを感じない。何度か書いたけど心の病気は結局のところケースバイケースなのだから、症例や経過を並べてもあまり意味が無い。病気の原因やきっかけもいろいろだし、どうやって立ち直るかも人それぞれだ。典型的な症状であっても一般化することは乱暴だということ。
けれど、言ってる内容自体に思うところあったので特集したいと思った次第です。さて、うつ病は大雑把に言うと落ち込んだりして何もできなくなる状態のことで、血が出たり熱が出たりしてるわけでもないのに仕事に行けなくなることから、まわりから見るとわがままだとかサボってるだけじゃないのかという印象を持たれがち。また、うつ病のメカニズムとして脳内の情報伝達物質の減少がみられることから、逆に脳内物質が正常ならば元気が無くてもうつ病にはあたらないという考え方もあるぐらい。
個人的にこの考え方はちょっとおかしいと思うのだけど、さらにこれを土台にして、うつ病とは脳内物質のちょっとした故障であるわけだから、ショックや絶望などとは関係無い場合があり、むしろそういうきっかけの無いうつ病こそが「真のうつ病」なのだという。心境や原因を重視しないわけだから、状況が好転しても治らないということになる。とにかく薬によって脳内物質を出すことだけが回復の道というわけだ。
この人はこの考え方を「元来のうつ病」と呼び、それにあてはまらない(つまり自称の)うつ病を「非定型うつ病」として、そういうタイプのうつ病もあるのだと主張している。前置き長くなったけどこの「非定型うつ病」がこの本のテーマ。続きまして非定型うつ病の特徴。
1.過眠
1日に10時間以上寝てしまうことが多くなり、嫌なことがあると眠くなる。うつ病の代表的な症状であるはずの不眠とは逆になっている。
2.鉛様麻痺
疲れやすさを通り越して体が鉛のように重くなる症状のこと。嫌なこと(仕事など)に対して特に元気が無くなる。逆に趣味や遊びに対しては普通に動けたりする。これを気分反応性といって従来のうつ病の典型例とは大きく異なる。
3.過食
甘いものを好んだり、気分が沈んでいるとは思えないぐらい食べてしまう。当然体重も増える。食欲と関係無い場合もあるらしい。
4.拒絶過敏性

非定型うつ病患者は他人の侮辱的言動、軽視、批判に極度に過敏になり、普通ではない激しい反応を起こします。(中略)また、傷つくことを恐れ、友人や恋人を作らないということもあります。このような引きこもり行動だけではなく、人によっては、喧嘩や口論および絶交状態を引き起こすことも稀ではありません。

これは非定型うつ病若い女性の恋愛の状況を観察していて気がついたらしく、女性に顕著な症状だそうです。こわいですね。ひとまず今日はここまで。